昨年末のブログ「パリ7区 素敵な画家との出会い」にてご紹介したクストディア財団美術館。
今回は普段公開されていない美術館の裏側を見学することができたのでそのご報告。
クストディア財団美術館内の入口を奥に進んでいくと元々は18世紀の貴族の邸宅だったものが事務所として利用されている一角がある。その貴重な空間を見学できるコースがあるのだ。(参加費無料。お申し込み方法はブログの最後にご紹介しま〜す)
前回の訪問以来こじんまりとした中にも品性ある展示の仕方や美術展のセレクションが卓越していると深い感動を与えてくれたこのクストディア財団美術館。きっとその裏側を見るこでまた新たな発見があるに違いない。


偉大なる美術史家FRITS LUGT
クストディア財団美術館は1947年、アムステルダム生まれの美術史家Frits Lugt氏とその妻Lugt-Klever夫人により創設。
Frits Lugt氏は「生まれながらの美術史家」と呼ばれていた。彼にまつわる逸話は色々あるようだが、例えば9歳の頃には自分の部屋に美術館のように絵画を飾ったり、15歳の頃にはレンブラントについての伝記を書き上げたり、、、
資産家の娘Lugt-Klever夫人との出会いも大きかった。二人で世界中を旅しコレクション収集に励んだ。
財団の名称でもあるクストディアの語源はイタリア語のCUSTODEから来ている。「ものを保管しそれらを多くの人に見せる」といったような意味があるらしい。
「美しいものを探しあて、そこに光をあてる」。
まさにこの美術館の存在意義だ。

18世紀 貴族の邸宅
今回はこのFrits Lugt氏も15年ほど住んでいたと言われる普段は未公開の邸宅(現在は美術館事務所)スペースの見学だ。
参加者は美術館入口に集合。全部で15名ほどだろうか。美術が好きそうなご高齢の方が多い。
見学前、控え室にコートや鞄など全て置くように言われる。きっと盗難防止用なんだろう。それもそのはず、この後の画像をご覧いただければお分かりだと思うが、スタッフが使っている机の上もそのままになっているような状態で我々のような部外者が見学するというなんだか非常に無防備な感じ。。。。(こちらが心配になってしまうぐらいだ)

この邸宅にはルイ16世の時に財務長官を務めたテュルゴーが住んでいた。画像の彫像はテュルゴーさん。名前ぐらいは知っているが彼のお顔をじっと見るのもこうした機会でもないとなかなかない(イケメンじゃない〜?)。
隣に置かれた椅子はルイ16世スタイルかな。深いグリーンと金箔の縁取りがなんとも美しい〜。

いよいよ見学スタート!
テュルゴーさんにご挨拶した後、目の前にパーっと広がるプチサイズ絵画の空間に圧倒される。
北欧を中心にイタリア、ドイツなど欧州各地の風景画の下絵のコレクションだ。
通常美術館ではスペースを開けて展示されるが昔はこのようにびっちり展示する方法もあったらしい。
風景画に絞られているので額縁の奥に広がる空が逆に遠近法を生み出し、窮屈な感じはしないのが不思議。
これらが下絵とは驚きだ。この下絵のスタイルが後に印象派の作風につながった。

それではお部屋の様子をご紹介。コレクションは
Frits Lugt氏自身が集めたもの、その後は財団のコンセプトから逸脱しないものが徐々に足されている。







「18世紀」の大広間
各部屋にはテーマがある。こちらは18世紀コレクションが置かれている部屋。当財団所蔵のデッサンの研究や打ち合わせなどに使われている。当日もスタッフの方々がお仕事をしていた。こんな美しい部屋でお仕事なんて羨ましすぎる〜。



「17世紀」の館長室
こちらは館長の仕事部屋。実は2010年から館長を務められていたGer Luijten氏が昨年12月にお亡くなりになったらしい。
当日ガイドをして下さったスタッフの女性も「まだ深い悲しみの中にいる」とおっしゃられていた。皆から愛された方だったらしい。ご冥福をお祈りしたい。
今は別の方が就任されているかと思われるがこの部屋は代々館長が使用している17世紀がテーマになっている部屋だ。
暖炉のダイル、シャンデリア、机など全てが17世紀のもの。
先ほどの華やかな18世紀の部屋と比べグッと渋みが増している。まさにフェルメールの空間。





まだまだある!
最後は18世紀コレクションの部屋。中国、オランダの陶器が興味深い。中央の机に段ボール?さっきまでお仕事されていたのだろう。




このような類い稀な空間を体験したい方はこちらのサイト内にあるEメール宛にお申し込みを!(人気ですぐに満席になるようですが涙)
偉大な美術コレクショナーの想いをつなぐクストディア財団美術館。
新たな想いで手掛けられる展示で美術品館に新たな命が吹き込まれる。
美術館は決して過去のものを集めた空間ではない。今を生きる人の想いがそこにあり、そして今を生きている人により愛でられる、いつまでも現在形で
未来に繋がっていく宝箱だ。