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フランス国籍取得の記念セレモニーに参加!

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4月の投稿でフランス国籍を取得した話をさせていただいたが、帰化を祝して「記念セレモニー」が開催されたので出席してきた。

場所は内務省管轄・帰化手続きのオフィス内の会議室。

一見パリにしては地味な場所だがここはノートルダム大聖堂のすぐ近くで、周りの建造物には中世の面影も残る歴史的に非常に古い界隈だ。
「ここからフランスが始まった」的な場所に帰化の事務所があるなんてさすが、やるなパリ(勝手に感動)。

そう、フランス国歌を暗譜で歌わされるのかと思っていた面談があったのもここだ。つい昨日のことのようだがもうあれから1年以上も経っている。

「どんなセレモニーなんだろう?」

郵送されてきた招待状にはセレモニーの内容について特に記載がなかったのでなんだかドキドキだ。

一人一人名前を読み上げられて帰化証明書のようなものをもらうのだろうか? 国歌をみんなで歌うのだろうか。
コロナ禍でしばらく中止されていたというこのセレモニー。再選後初のセレモニーってことでまさかマクロン大統領が臨席してしまったりするのだろうか?

と、「妄想に近い想像」でもって勝手に緊張しながら会場に到着。指定された時間の30分も前に到着してしまったがパラパラと人が集まり出してきた。きっと同じセレモニーに出席する「同期」だろう。

トリコロールのお部屋でのセレモニー

入館後、窓口で持参した滞在許可証を返却。同時にフランスの身分証明証、パスポートが出来るまでの仮の証明書(紙1枚)を順番に受け取る。その他あらゆる書類が入ったセットを受領したがそちらについてはこの後説明させていただこう。

20年以上も都度更新しお世話になってきた「日本人としての滞在許可証」はもう手元にない。更新の度にアポを取り書類を準備したりするストレスから解放されると思うと嬉しい反面ちょっと寂しい感もある。

さて手続き終了後セレモニー会場へ移動。普通の会議室だが、ま〜壁から何からトリコロールだこと!

そして内務省の特注だろうか、こんなパイプ椅子は初めて見た。パリの街中では見たこともないタイプ。そのキッチュさに一気に緊張の糸が解け吹き出しそうになってしまった。

室内には70名ほどの「同期」がいる。赤ちゃん連れの家族、若い学生風の人、そこそこご高齢なマダム、、、それぞれの理由、想いでフランス国籍を選んだ同志たちだ。

司会の挨拶が終わり10分ほどのビデオを見る。内容は「自由、平等、友愛について。宗教による差別はないこと。投票や教育などの権利、義務など」について。

続いて関係部署のオジ様のスピーチ。にこやかでゆっくりとした口調でとてもわかりやすい。やはり公の場に立たれる方は皆さんスピーチがお上手だ。マリー・キュリーやアポリネール、シャガールなど先人で帰化した各界の有名人の名を挙げながら、我々新生フランス人の未来を讃え、励ましてくれるものだった。

今回出席した同期たちが属する、20ほどの国名が全て列挙された。もちろん「JAPON」も聞き逃さず確認。

↑会場の様子。前方にいらっしゃるのは手話のおじさま

ちなみに国内の法律の変更は定期的に発行されるJOURNAL OFFICIEL(公式な通達、新聞)にて発表されるが、帰化した全員の名前、生年月日、出身国がそちらに記載される。もちろん私の名前も3月初旬の通達に記載されていた。アフリカ、南米、ヨーロッパ、アジアなど1500名あまりのリストから自分の名前を見つけた時は感動だった。

セレモニーで受領した書類

さて当日受領した書類をご紹介しよう。

まずは書類をまとめる紙のファイル(大)と今後の手続きに関する説明書(小)。ルーヴル美術館にある有名なドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」がモチーフだ。まさにフランスのシンボル。

表紙にはVous venez d'acquérir la nationalité française 「あなたはフランス国籍を取得されました」の一文。

最初の資料は「1789年の人権宣言」が記された紙。当時の復刻版スタイル。フランス革命の基本理念をなすものだ。いつかは(いつだ?)一つ一つ読み込んでみたい。

そして忘れてならぬ国歌 La Marseillaise ラ・マルセイエーズの歌詞カード。ご存知の通りフランス革命時にマルセイユ義勇兵が士気を高めるために歌っていた軍歌であるので「血まみれの旗」「武器を取れ」など割と物騒な歌詞になっているがこれがまた現代ではサッカーの試合前に選手が歌うのを聞くと勝てそうな気がしてちょうど良い。

1番から7番まであるのは知っていたがこちらの歌詞カードには「1番、9番」とある。え?一体何番まであるの? どうやら元々は15番まであったらしい。

9番の歌詞はというと「ヨーロッパが賞賛するフランスは自由をもたらした。市民は平等だ」。なるほどこの9番が加わることで本来の国歌らしくなるという計らいか。

次の書類は1958年制定のフランス共和国憲法の抜粋。これもいつか(だからいつ?)じっくり読むことにしよう。

そして「フランス市民の権利と義務の憲章」。以下の紙(表裏)に次のような内容が記載されている。

「フランス国民は1789年8月26日制定の人権宣言を認識する」「共和国のシンボルを尊重する」「国家の象徴はトリコール、つまり青、白、赤である」選挙権、法の絶対性など共和国としての理念も。

「自由は決して他人の領域を犯さない。」「男女平等」「市民は国を守り、国は市民を守る」

フランス人が個人個人を尊重する市民であることを改めて実感。時代を経て市民が戦い、そして勝ち取ってきたフランス人そのものの歴史である。

最後にご紹介するのはマクロン大統領からのお手紙。印刷だがご本人の署名付き!大統領名の手紙をいただくなんて人生で最初で最後だろう。

概要は次の通り。

「フランスは女性、男性全ての人が何代にも渡りその意思と、それぞれのやり方で今日につながる歴史を歩んできました。

フランスは人としての価値を受け入れ、そして守る国です。

フランスを選んだをあなたを心から祝福します。フランス人になったことであなたは自由、平等、友愛の世界に受け入れられました。あなたはこれからはフランス人としての、ヨーロッパ人としての権利、義務を持つことになります。

フランスはあなたを迎えることができ誇りに思います。あなたや周りの人たち、そして『我々の国』にとって非常に大切なこの時に心からお祝い申し上げます。」

最後の「我々の国」という言葉に胸が熱くなった。フランス、と言わず「我々の」国と表現することで一体感が増す。

国歌とマリアンヌ

セレモニーの最後は全員立って国歌斉唱であった。国籍申請の面談時に歌えなかったので「よし来た!」とばかりに張り切っていたがいきなり前奏もなくコーラスの録音が聞こえ歌が始まった。こけそうになったが最後まで力強く歌うことができた。皆は地声で歌っているようだったので声楽調の裏声で歌うのはやめておいた。

他人に迷惑をかけてまで自由を尊重するのはフランス人としていけてないからね。

セレモニー終了後はフランスの象徴、マリアンヌの彫像の横で写真撮影が許された。
感無量!

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