パリ11区に18世紀当時のやり方でドミノペーパー(*)という紙を復活させ新しい内装を提案するブティックがある。その名もANTOINETTE -POISSON.
「アントワネット」と聞くと「マリー・アントワネット」を思い起こす方も多いかと思うが、ルイ15世の寵姫であったポンバドウール夫人へのオマージュから命名されたものだ。そう、彼女の本名はJeanne-Antoinette Poisson。
有名なカンタン・ドゥ・ラトゥールによる彼女のパステル肖像画を観てもわかるように彼女は音楽、文学など文化全般の庇護者であった。どうやらそれだけではなく内装に壁紙や布にもそのセンスを発揮していたようだ。
そこに目をつけた若きフランスのクリエーターがいた。Vincent Farelly とJean-Baptiste Martinだ。2012年以来、18世紀調の美しい花柄などのモチーフを元に壁紙やインテリア小物などの創作で脚光を浴びている。

彼らが一躍有名になったのは2年前に大手スーパーマーケット MONOPRIXとのコラボで制作されたエコバックやインテリアグッズ。伝統的でありながらどこか現代の新しさも入ったそのデザインに魅了された私は今でもそのエコバックの保存版、使用版の両方をキープしている。
(*)ドミノペーパーとは木版で図柄を印刷し、絵筆で色付けした装飾用の紙のこと。18世紀後半のフランスでその最盛期を迎える。
いざブテイックへ!
いつかアトリエ兼ブティックに行ってみたいと思っていたのだが今回それが実現した。
シックなマレ地区のちょっと奥まった界隈に佇むANTOINETTE POISSON。

小さな間口をくぐるとそこはもうポンバドウールの世界!!ツボすぎる小花や葉っぱのモチーフが散りばめられたノートや小箱を前に軽く小躍りをしていると(いつもの通り怪しい女風、、)ふとVincent
Farellyさんご本人が笑顔で立っていらした。
春らしい空色のシャツ、パンツの組み合わせがま〜さりげなくてイケメンでいらっしゃること、、おほほ。
「18世紀美術が大好きでこちらのブティックに以前から来たいと思ってました!」と自己紹介をした。せっかくなので彼のお姿も写真に収めたかったのが「今日の僕はあんまり綺麗じゃないので控えたい」とあっさり、、めちゃくちゃ素敵な方なのに、、、さすが美意識の高い方は違うんだなと納得。



作品のモチーフは18世紀の画集やカタログからピックアップしたものと彼らのクリエーションによるものが融合している。それでどこかモダンな味わいもあるのだと実感。
店内では一枚一枚製作されたドミノペーパー、壁紙、文具、オブジェなどANTOINETTE POISSONおなじみの品に加えアンティークも販売されている。
アトリエをちらっと覗いた。木彫の家具に布、紙が馴染んでいて温かな空気。18世紀にタイムスリップしたかのようだ。

マリー・アントワネットの劇場
店内奥に香水の販売コーナーがある。そちらのデコレーションもこれまた素晴らしい。小躍りどころかタップダンス調で小窓を覗く私(怪しさMAX。。)
「ヴェルサイユ庭園のマリーアントワネットの小劇場を思い出しますね!」と彼に言ってみた。
「そうなんです、、僕は以前その劇場の壁紙の修復もやった事あるんですよ!」と彼。
そう、何かしらの着想を受けているに違いない!まんざら突拍子もないことを言っているわけではないとホッと胸を撫で下ろす。



甘酸っぱいジャム「愛の泉」
せっかくだから何か手に入れたいと思い店内を物色。「PUITS D'AMOUR」という名前のジャムを見つけた。
直訳で「愛の井戸」になるが、日本語で「井戸」というと何やらおじいさんがカラカラと水を汲み上げるシーンが浮かんでしまう私であるのでここでは
「泉」という言葉を代用したい。
なんてロマンチックなジャム〜。元々はPUITS D'AMOURというお菓子からきている。当時ルイ15世がポンバドウール夫人のために美味しいお菓子を職人たちに作らせたのがこのPUITS D'AMOUR。今では中にクリームが入っているのが普通だが当時はジャムが入っていたらしい。
そしてそのジャムのレシピを保存料など一切使用せず伝統的な手法で作るConfiture Parisienneが発見!この度ANTOINETTE POISSONとのコラボが実現したわけだ。
お味はというとフランボワーズのほど良い酸味とさりげない甘さが見事に融合している。パンなどにつけずに食べても美味しい!!
そしてジャムがなくなってもANTOINETTE POISSONオリジナルの小箱でまた楽しめる。アンティークのアクセサリーでも入れようかな。
ポンバドウール夫人への愛、18世紀美術への愛、、、、愛がいっぱい詰まったこの小さな泉から大きな幸せが溢れ出ている。

