友人パリマダム、ブリジットと過ごすとある週末のお話。
彼女はパリ16区に住んでいるので我々のデートもその界隈だ。16区はパリの西側。もともと森が広がっていた地域なので今だに見事な木々が植っていて歩いているだけでもどこか牧歌的でリラックスできる。ハイソな地域でもあり歩いている人もどこかお上品だ。以前16区のアールヌーヴォー建築をめぐった話をしたが美しい建築物も多い。
天気が良いので彼女の車で10分ほどのブローニュの森にあるテラスレストランへ行くことになった。
車窓越しの日差しが強い。サングラスをかける。そう、この時期サングラスは必需品。決してパリジェンヌ気取りで格好つけているわけではない。
サングラスなしで日中外を歩いていたりするとその夜は目が血走っている。
気取るどころかホラーな夏。
しかし今年の夏は本当に毎日よく晴れて暑い。これだけ夏らしさを満喫できるのも珍しい。例年だと7月は雨の日も少なくなく気温も今一つ低かったり夏日は数えるぐらい。そして「よ〜し、8月だ!」と思った瞬間、木々が色づき始め秋もすぐそこといった具合。それがおパリな夏。

さてレストラン L'AUBERGE du Bonheur に到着。直訳すると「幸せの宿」。年中無休。ヴァカンスシーズンの8月も毎日やっているやる気満々のレストラン。この時期は予約は取らないらしいのでランチなら12時過ぎには現地へ行っていた方が良い。14時前にはほぼ満席になる。パリ市内からはメトロやバスを乗り継いでも行ける。
このレストランの横にはナポレオン3世が狩猟の時に使った宿を改造したLa Grande Cascadeというミシュラン一ツ星レストランがある。そちらも素晴らしいのでご興味あれば是非是非に!

「幸せの宿」に話を戻すと、夏はすべてテラス仕様、プライベートなお庭でお食事しているようにほっこりできる。冬は暖炉付きの店内利用が可能らしい。
場所がパリから少し離れているせいか観光客風の人は見かけない。ラフだがおしゃれなご老人夫婦や犬連れの家族など和気藹々と幸せな笑顔があちらこちらに。まさに文字通り「幸せの宿」だ。

お料理はクラシック。ブリジットと私はいつもこのぷりぷりしたエビと白米。和風の甘みソースが暑さで疲れた体に優しく溶け込む。もちろんデザートのアイスクリームも必須だ。

お食事の後は公園でお散歩
パリマダムが大好きな公園、それがバガテル公園。ランチ後のお散歩は決まってこちら。
1775年、マリー・アントワネットとアルトワ伯爵の賭けによりたった64日間で作られたというお庭。その後あらゆる所有者の手を経てパリ市管轄の公園となった。
1907年創設された敷地内のバラ園には1200種類ものバラが植えられており毎年開催される国際品評会が有名だ。


さすが貴族の持ち物であった場所だけに門構えだけでも絵になる。
10月〜3月は無料だがそれ以外は2.5ユーロの入園料がかかる。
餌をおねだりする孔雀さんとも戯れることができる。なんと優雅な空間。


バラ園は5月〜6月が見頃だがこの8月でもまだところどころに美しいバラたちが咲いている。






木陰のベンチに腰を下ろす。目の前には樹齢何百年ものの木。
「孫たちを見てて思うけど若い頃はこういう木々に目がいかないのよね。でも歳を重ねるごとに生きとし生けるものの美しさがわかってくるわ。」
ブリジットは空を見上げながら独り言のように呟いた。

ふと視線を下ろすとその昔冬にオレンジなどの樹木を保管していた温室「オランジュリー」がある。

ここは夏の間クラシックコンサート会場として使われている。10年以上も前に母とここでショパンのピアノを聴いたな。母はもういないがその思い出は永遠だ。

奇しくもブリジットは母と同年齢。性格は違うけれと温かさは同じ。そんな彼女に私はいつも救われている。