今回は前々回のアールヌーヴォー探訪①に続きヘクトール・ギマールHector Guimard建築
を巡る編その2だ。
パリ16区南部の作品巡りをした。
15区の自宅を出てセーヌ川を見ながらMirabeau橋を渡りそのままMirabeau通りへ。
すぐにギマールによるデザインのメトロ10番線Mirabeau駅入り口が目に入る。

Mirabeau通りをまっすぐ進むとそのままMolitor通りにつながるが
その1番地別館に本日の1件目のギマール建築がある。

不思議な佇まいだ。ネオ・ロマンスタイルというらしい。
正面の鶏は家主のリクエストとのこと。
この界隈はブローニュの森が近いせいか、街路樹の茂みが市街中心地よりも豊かで美しい。
休暇で小さな村を訪れているかのようだ。
Molitor通りを先に進み、Boileau通りを左に曲がると次の目的地へ到着。
レンガとターコイズの色のコントラストが鮮やかだ。
ちょうどフジの花が咲き乱れ風情がある。


残念ながら肝心な外壁のデザインをよく見ることはできないが
レンガ造りは16区北部の建築にはあまりないので面白い。
100年前、この界隈は現在よりももっと森が残る牧歌的な郊外であったのかな~。
さて、そのままBoileau通りを進み、Exelmans大通りをまたぎ77番地まで進む。
標準的なギマール建築に到着。

Exelmans大通りに戻り、39番地へ。
おや??建物の正面に何やら彫刻が張り付いている。

正面の彫刻をズームアップするとこんな感じ。


柔らかな微笑みを浮かべた彫刻、、、どこかで見たことがある作風だな。
そう!オルセー美術館やプチパレ美術館にもその作品がある
19世紀フランス彫刻家Jean-Baptiste Carpeauxのものだ。
どうやらここは彼のアトリエだったらしい。
ギマールはもともとあった建物に2階部分(日本式3階)を加えた。
確かにその部分だけレンガ造りだ。
ちなみにCarpeaux はオペラ・ガルニエ正面右の中央よりにある彫刻La Danseでも有名だ。
本物が見たくなり仕事帰りに早速写真を撮ってきた。

拡大するとこんな感じ。

女性たちに囲まれたバッカスが華やかに舞っている。
流れるような構図が今にも動きだしそうな躍動感を生み出している。
オペラ座のイメージにぴったりだ。
優しい微笑みに仕事の疲れも飛んでいく。
さてパリ16区の探訪に話を戻そう。
彫刻家CarpeauxのアトリエからChardon-Lagache通りを北上すると41番地に
Hôtel Jassedé という館がある。
Hôtel といっても所謂「ホテル」、ではなくこの場合は個人の邸宅を意味する。
食品店のオーナー、Louis Jassédé氏のものであった。
これまたフランスには珍しいレンガ造り。
ギマールはデザインの自由さだけではなく
あらゆる建築材料にも自由なアイデアを広げていたことがよくわかる。


この館のすぐ横にHôtel Deron-Levent、というのがあるがこちらもギマールの作品だ。
柵の外からしか見れず、以下の写真もなんだか牢獄?からのようなアングルで
寂寥感を否めないが興味深いのでパチリ。(手を柵の中に入れて撮影しても
良かったが住人らしき方がいらしたので目立つ行為は控えておいた。。)

さて今日の探訪も終わりに近づいてきた。
特徴的な個人邸宅を後にし、最後はVersailles大通り142番地にある
アパルトマンだ。



正面にあるギマールのサインを確認。これは1905年の建築なんだな。
今日は「癖の強い」ギマール建築が多かったのでこのスタイルは
ホッとする。相変わらず美しい。。。
アールヌーヴォー探訪をするようになってから
普段歩いていてもアパルトマンの建築家のサインをくまなく
見るようになってしまった。
パリといえば道端のワンちゃんのウXXを踏まないように
なるべく下を見ながら歩くのが常だが、
昨今ではその量(?)も減ってきたことだし(これホントです)
これからは美しい建築を見ながら
上を向いて歩いていきたいもんだ。