フランス南西部ボルドーBordeauxから車で1時間30分北西へ行くとウルタンHourtin という湖に面した町がある。そこで毎年4月末に1週間開催されている
ウルタン・メドック国際音楽アカデミー声楽部門に参加してきた。数年来声楽を教わっているメゾソプラノ歌手小林真理先生が当アカデミー内で授業を持たれるので絶好の機会だ。
自然豊かな環境で歌う
パリ・モンパルナスMonparnasse駅からTGV高速鉄道でボルドー駅へ。ワインでも有名なボルドーへはパリから2時間ほどであっという間に到着する。

ボルドー駅から宿泊先までは通常アカデミーが用意する大型バスで行けるのだが私は途中からの参加であったため自分で地域バスに乗り現地へ。
バスの窓の外に美しいメドック自然公園の緑が走る。日常の雑踏からどんどん切り離される。

ウルタン湖に面した宿泊施設アパート型ホテルに到着。今回2回目だが港はいつ見ても美しい。こんな環境で歌えるなんて本当に幸せだ。

とことん自分と向き合う授業
今年で第26回を迎える同アカデミーはヴィオリン、チェロ、フルート、ハープなどの楽器部門と声楽部門とに分かれる。今回は全部で90名ほどの生徒が参加した。
音楽家を目指す若い学生から私のようなアマチュアの音楽好きな人まで参加できる非常に開かれた講習会だ。
今回小林先生の声楽部門へは日本、フランス各地から7名の生徒が参加。20代から60代まで幅広く、すでにプロの音楽家として活躍の歌手もいる。参加者は先生のお弟子さんが多いのでほぼ皆知り合いだ。それぞれの目的に向かって精進し続けるとても素敵な仲間たちだ。


授業内容は午前中は一人20分ほど発声の基本を、午後は30分で課題曲を先生に見ていただく。他の生徒たちのレッスンの様子も見ることによる学びも多い。
私の課題曲はイギリス・バロックオペラ、パーセルの「ディドとエアネス」より「When I am laid in earth」とフランスはフォーレの歌曲「月の光」。どちらも大好きな曲だ。
久々のレッスンだったので口は開かないし、頬の筋肉は下がるし、息を吐きながら歌うことを忘れているし、、で初日からびしびしと先生から注意される。
小林先生のご教授は絶対ぶれない。いつも同じことを言われているのになぜできないのか、、、、歌うためにはあらゆる体の部位を意識しなければいけないが一度にやろうとすると意識ばかりが先走り何かの作業を忘れる。忘れないためにはひたすら練習し体に覚えさせるしかないのだろう。そういった振り返りの作業が毎日続く。都会で感じる喧騒はとっくにない。
余暇は自然と食に癒される
授業以外の時間はなるべく自然を見たり、鳥の声を聴いたりしながらリフレッシュさせる。今回このようなフランス地方での講習会に参加するのは6回目だが当初はあまりに考えすぎて発声自体がわからなくなり一人で煮詰まってしまっていたものだ。
そんな時はサイクリングをしたり、街並みを歩いて気分を変える。


食も豊かなウルタン。アカデミーが3食用意してくれる。きちんとアントレ、メイン、デザートのブッフェスタイル。なかなか美味しい。最終日は大パエリア大会であった。

夜はコンサートでうっとり〜♪
講習期間中、ウルタン教会では無料コンサートが開かれる。こちらは講習会の先生方によるコンサートの模様。

小林先生はマーラー「リュッケルト歌曲集」から「私の歌を覗き見しないで 」「美しさゆえに愛するのなら」をご披露。澄んだ歌声が教会の天井を突き抜けるように響き渡っていた。

講習会最終日には生徒たちによるコンサートも!仲間たちがモーツアルトのオペラ「ドン・ジョンバニ」のアリアを披露。こんな素晴らしい才能豊かな仲間たちと学べることに心から感謝だ。

冷や汗ものの発表会
毎回講習会を締め括るドキドキの発表会。一人一曲ずつ皆の前歌い上げる。一般のお客様もいらっしゃる。
今回はパーセルの歌を選んだが最初のレシタティブ(セリフ的な歌詞の部分)が思いっきり記憶から飛び意味のない言葉でふにゃふにゃ歌ってしまった。曲も短いし歌えるだろうと完全に甘く見ていたし、練習不足と猛省なりけり〜。ここでもまた弱い自分と向きあうことになる。辛いが事実を受け止めることはいつでも必要だ。
恥ずかしながらちょいと歌っている様子をご紹介(もちろん歌詞が飛んでいない部分!)。音があちこち外れているが今後の課題ということでご容赦を!
講習会終了後、ボルドーの街を探訪
怒涛の?合宿を後にし、せっかくなのでボルドーの街を堪能することにする。当日は5月1日、つまりメーデーだったのでデモ行進も見たが静かな感じ。それもそう、この日はトラムウェイも一切ない。天気もいいので人は皆森へ行ってしまったのだろうか、、とても静かで快適な街並み。


アカデミースタッフからお勧めのあったビストロ Le Noiallesへ。そりゃあ、ボルドー飲むよね〜と。


本場のコンフィ・ドゥ・カナール(鴨コンフィ)は肉厚で味が染み渡り美味なり〜。ワインは詳しくないのでお店の方に選んでいただいた。相性抜群!

デザートはほぼ全面イチゴのタルト。立体的で独特。もちろん最高に美味しかった。

レストランから歩いて5分のところで大きめのブロカント(蚤の市)が開催されていることを「そりゃあ、行くでしょう」ってことで行ってみた。さすがボルドーはパリに比べてスペース的にも余裕があり各ブースのプレゼンテーションもさらに田舎ライフ的で本当に素晴らしい!講習会の疲れは一気に飛んだ。





確かパリ郊外CHATOUで年2回開催される大きな蚤の市でアクセサリーを売っているマダムはボルドーから来ているとのことだったのでふと思い出し探したら、、、いらしたいらした!こういった再会も嬉しい。
今回の戦利品。ヴィンテージの藤の籠とブレスレットなど。カゴは25ユーロ。お得!おそらくお裁縫入れ的な籠だが私はアクセサリー入れに使うかな。


最後にガロンヌ河にお別れをする。優雅で我々を包み込むような雄大さ。来年もこの地に立っているだろうか。。。