今年は晴れの夏日が続き非常に心地よいフランス。そんなある週末、友人マダムのブリジットとノルマンディー地方のトゥルーヴィルTrouvilleへ行ってきた。
パリから電車でたった2時間で行ける海辺の街。その隣街ドーヴィルDeauvilleという街の名前なら聞いたことがある方も多いかも知れない。
ドーヴィルは19世紀後半にパリから鉄道がつながったことで富裕層が訪れる高級リゾートとなった。最近ではテレワーク導入で多くのパリジャンがこの地に引っ越してきているらしい。
一方、同じ到着駅の反対側トゥルーヴィルは昔から漁港の街でドーヴィルより風情があり落ち着いている。
海の近くで育った私はパリにいるとたまに「海欠乏症」に見舞われる。セーヌ川も今では心の故郷だが、境界線のない空や水の広がりに包まれたくなる。そんな欲求を満たしてくれるのがトゥルーヴィルだ。

出発はサン・ラザール駅。駅前にあるフランス彫刻家アルマンARMANのアートモニュメントが目印。廃材を芸術作品に変えることで第二次世界大戦後の消費社会を批判した彼であるがその作品にはどこか品がある。

出発時刻の15分前に乗車ホームが表示される。以前は印刷したチケットを機械にかざし自分で改札印を押していたが最近では自動改札が完備された。昔ながらの屋根と最新の改札口。なんとも不思議な対比だ。
サン・ラザール駅と言えばモネの連作が有名だが彼が今この風景を見たらどんな絵を描くのだろうか。そもそも機関車の煙の動きに興味を持った彼だろうから描くものもないか。逆に自動改札から煙が出ていたら大問題だ。。
海の街に到着
さて車窓からのどかな田園風景を楽しんでいるうちにあっという間に目的地トゥルーヴィル・ドーヴィル駅に到着。駅を出て向かって左側がドーヴィル、右側がトゥルーヴィルだ。
ノルマンディー地方独特の木骨造りにうっとり。駅前の木々の緑、色とりどりの花壇も北独特の光に反射して美しい。
名物カモメちゃんがお出迎え。
「ただいま〜!!2年ぶりに戻ってきたよ〜!」とご挨拶。もちろんシカトされた(いいのだよ〜。君たちがいてくれるだけで、、涙)。


滞在はトゥルーヴィルのプチホテルで
ここ7〜8年滞在しているのはいつも同じホテル、Le Fer à Cheval (「馬蹄」の意味)。駅から徒歩10分ほどだし、海やレストランも近い。部屋はコンパクトだが清潔でおしゃれ〜。イケてる女の一人旅にもってこいだ。
そう、今回同行した友人ブリジットもこのホテルが好きで一人で来るようなタイプだ。数年前お互い滞在している時に何気ない会話から知り合い、パリの家も偶然近かったことから今では一緒に旅する仲になった。
これもご縁だね。ただし自分の時間はそれぞれ大事なので部屋は別だし、日中はそれぞれ自由行動で食事はなるべく共にする。



昔は元パン職人だったオーナーが毎朝手作りのパンを出してくれたりしたのだが彼は引退しお嬢さんが切り盛りをしているらしい。最近ホテルを拡大したことからグループ予約とぶつかると、朝食時に多少バタバタするがその他は問題ないと思う。



部屋で落ち着いた後、近くの海を散歩した。広い空!!!これこれ!思いっきり深呼吸。南仏ニースとはまた趣が異なる。ノルマンディーで活躍した印象派ブーダンの絵が思い浮かぶ。
ディナーはもちろん海の幸!
夕食はホテルから徒歩2分、ブリジットおすすめのレストランLES MOUETTES(すばり「かもめ」の意味)で。トゥルーヴィルでは
表通りに面しているLES VAPEURSも有名なのだが人気が出過ぎて少々落ち着かない感があるので生粋のパリジェンヌ、ブリジットは奥ゆかしいLES MOUETTESの方がお気に入りだ。

彼女の一存でパリにはあまりないラングスティーヌLANGUSTINE(ヨーロッパアカザ海老)をいただいた。ザリガニ感半端ない外見だがコリコリの歯応え、潮の風味が最高だった。


デザートはバニラアイスのフランボワーズ添え。なかなかの量だったがぺろっと完食。旅では食欲も増す。
ふと店内に薔薇を売るおじいさんが入ってきた。フランスではこのような小銭稼ぎの人がたまに入店してくる。レストラン側も見て見ぬふりで非公式な「商売」を許しているのだろう。
ブリジットはそっとお財布をだし薔薇一輪を買って私にくれた。
「ああいう年老いた人が働いているのを見るといてもたってもいられないのよ。少しでも役に立てればいいわよね」
彼女は一緒に歩いていて物乞いの人がいると「頑張りなさい」と言ってその手に10ユーロ札を握らせたりしている。
普段は口調もまあまあ厳しい彼女だが優しい心を持った人なんだな。
食後に一人で夜の海を見に行った。
夏の夕陽が海を照らしている。心も照らされて温かい。

