6月某日、フランス国籍取得後初めての誕生日!
と言っても別にエッフェル塔で花火が上がるわけでもシャンゼリゼ通りでパレードがあるわけでもなく今までと何も変わりはないのだがせっかくなのでヴェルサイユで一人祝うことにした。
今年はフランス17世紀の劇作家モリエール生誕400周年で盛り沢山のイベントが目白押しというお話しを以前させていただいたが、ちょうどヴェルサイユ宮殿の敷地内にあるオペラ・ロワイヤル(オペラハウス)でモリエール作品の公演があるので予約しておいたのだ。
ヴェルサイユは小旅行気分
自宅最寄りの駅からヴェルサイユまでは郊外電車で約20分。ヴェルサイユ駅を降りて宮殿までは徒歩で
15分ほどだ。右手に立派な市庁舎を見ながらすたすた歩く。1790年建立のこのルイ13世様式の建物はヴェルサイユで最も古い市庁舎だったとか。


奥に見えるのがヴェルサイユ宮殿の正門だ。王の馬車が通った街道はさすがにゆったりと堂々たる広さ。パリとは異なる風景にまるで小旅行に来たかのような気分になる。
観劇の前にまずは腹ごなしかな〜と近くのマルシェ界隈のクレープ屋さんへ。以前この界隈のレストランが大外れだったので(残念ながら「おフランス」にも美味しくないレストランはある)、無難なクレープ屋さんをチョイス。


ブルターニュ旅行にいった時ぐらいしかクレープはいただかないが、たまにはいいかも!
クレープ屋さんではおかず系のガレット(蕎麦粉のクレープ)とその後のデザートに甘いクレープ(小麦粉)を注文する。
飲み物はシードル(りんご酒)がお約束だが暑かったので迷わずビール(おっさんかと)。

カリッと仕上がった美味しいクレープに舌鼓を打っていると横にある家族が席についた。3人の子供たちとお父さんだ。お母さんはどうやら今日はいないのか、はたまた別々に暮らしているのか、、
子供が大好きな私は彼らがどんな話をするのか気になりそっと耳を澄ます(人はこれを「盗み聞き」という)。
3人の子供たちが一人ずつお父さんに何かを渡し始めた。お父さんはニコニコと嬉しそう。
一人のお嬢さんが席を立ち、お父さんの横で何かを説明し始めた。
「これはパズルよ。自分で作ったの!」
「おお、綺麗だね。どうもありがとう!」とお父さん。
そうだ、今日は父の日だ。3人の子供たちはそれぞれプレゼントを用意しているようだ。
気を遣ったお母さんはあえて来なかったのかな?無邪気で幸せそうな子供たちのはしゃぎ声に思わず涙が出そうになる。可愛すぎる。
4歳の時に父を病気で亡くした私はほぼ父を知らない。建築家だった父がまだ健在でこのヴェルサイユに来ることができたらいたく感動していただろう。
こうしてヴェルサイユで誕生日を祝えられるのも父のおかげだな。お父さんありがとう。
そんなことを思わせてくれたこの素敵な家族にも感謝(記念にしら〜っと撮影させてもらった。よく見るとお父さんがイケメン風)。
いざ宮殿へ!
心もお腹も満たされた後はいよいよ宮殿に向かう。ヴェルサイユ通の私は(自分で言うか)いつも正面向かって右側の小さな門から入園する。こちらの方が入場する観光客が少ない。コロナを経て来訪者数はまだまだ回復していなさそうだが昨年よりは遥かに上回っているのは確かだ。


中に入ってから奥にある門をパチリ。夏の光を浴びて輝く金箔が神々しい。

宮殿横のオペラ・ロワイヤル入口に到着。開演45分前なのに既に多くの人たちが待っている。

全てが美しいオペラ・ロワイヤル
オペラ・ロワイヤルは1770年ルイ15世の時に建てられた。自らバレーを踊り音楽も愛した太陽王ルイ14世が手がけたかと思いきや、彼の時代はプロジェクト止まりであった。
その後アイデアを引き継いだルイ15世が孫のルイ16世、マリー・アントワネットの婚礼儀式のために
このオペラ・ロワイヤルを完成させた。
さて荷物検査を受け中に入る。さすがヴェルサイユ様。すぐに劇場は現れない。まずはシャペルの前を通っていく。こちらは1710年ルイ14世の時代に建てられた。普段は入れないが定期的にバロック・コンサートが開かれている。いつか来よう。

長い回廊を通って奥に進む。

会場に入った途端、ふわーっとシャンデリアの光に目を奪われる。ここは夢の世界なのか???
2年ぶりに来たが初めて来た時のような深い驚きと
感動を覚える。
では美しいその内装をお裾分け。。。



今日の演目はモリエールの「町人貴族」。裕福な商人ジュルダンは貴族の称号欲しさにダンスや音楽、武術などの教養を身につけようと試みるがどうも不器用でうまくいかない。若造からお金を巻き上げられたりその姿が滑稽で開演中は観客の笑い声が耐えない。
俳優たちは舞台で所狭しと走り回り、泣いたり笑ったり、こけたりでかなりドタバタだ。関西のなんとか新喜劇のよう??(言い過ぎ?)
それもそのはず、今回の演出は知性、ユーモアで有名なコメディーフランセーズのドゥニ・ポダリデスだ。
クリスチャン・ラクロワの衣装にもうっとりだった。まさにロワイヤルの雰囲気にぴったり。写真は撮れなかったので雰囲気だけでも公式サイトからご覧いただければと思う。

笑いと感動の3時間、モリエール劇が終わった。
私の人生劇場はこれからも続く。。。。